配管の製造方法・製造工程、仕上げなどの種類
ここでは配管の製造体系やパイプの製造工程・プロセスについて解説しています。
※ここでいう配管(パイプ)とは、塩ビなどの樹脂配管ではなく、炭素鋼やステンレス鋼などのいわゆる鋼管のことを指します。
■ 配管の製造体系(製造方法によるパイプの分類)
配管(鋼管)の製造方法には用途、パイプの材質、サイズの違いなどに応じ、経済性や生産性も考慮したいくつかの製造方法・体系があります。
製造方法の違いにより、配管の長手方向のシームの有無で大別すると以下のように、継目無鋼管や溶接鋼管・鍛接鋼管があります。
- 継目無鋼管(シームレス鋼管)
パイプの長手方向に溶接や鍛接によるパイプの継目(シーム)の無い配管。
継目・縫い目(seam)が無い(less)ので、シームレス鋼管(Seamless Pipe)とも言われます。
- 溶接鋼管・鍛接鋼管
溶接や鍛接によるパイプの継目(シーム)がある配管。
継目(シーム)の形状にはパイプの長さ方向に平行で真っすぐなストレートシーム鋼管と、らせん状の継目のスパイラルシーム鋼管があります。
継目の成形法や接合法によって、鍛接鋼管、電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)、アーク溶接鋼管などがあります。
■ 熱間仕上鋼管・冷間仕上鋼管
パイプの仕上げ方法によって鋼管を分類すれば、以下などの種類が挙げられます。
- 熱間仕上鋼管
- 熱間仕上継目無鋼管、熱間仕上電縫鋼管(熱間仕上電気抵抗溶接鋼管)、鍛接鋼管など。
熱間仕上鋼管は、パイプの素材となる材料をある温度以上まで加熱して成形した鋼管になります。
一般にはパイプの全領域が等しく加熱又は冷却されているので、基本的に鋼管の位置における局部的な強度の違いなどは発生しません。
冷間仕上鋼管と比較すると、寸法精度はあまり高くなく、パイプ表面にスケールが付着したり、材料圧延時の成形の過程で圧延ロール痕が残存する場合があるなど、表面性状はあまりよくないのが一般的です。
熱間仕上鋼管の製造方法を表す記号として、以下の例のように、『H』を付記して表す場合があります。
- 熱間仕上電気抵抗溶接鋼管-E-H
- 熱間仕上継目無鋼管-S-H
- 冷間仕上鋼管(冷間伸管)
- 冷間仕上継目無鋼管、冷間仕上電縫鋼管(冷間仕上電気抵抗溶接鋼管)、冷間仕上自動アーク溶接鋼管など。
冷間仕上鋼管(冷間伸管)は、いったん成形したパイプを金型(ダイス)に通すことにより強い加圧力を加えて必要な寸法に矯正し、仕上げ成形した鋼管です。
熱間仕上鋼管と比較すると、ダイスに通して加圧・矯正することによって、寸法精度や表面性状がよいパイプに仕上げることができます。
ただし、熱間仕上鋼管よりも製作工程が多いことなどからコスト的に高価な配管になります。
冷間仕上げ加工では、圧延・成形時に過酷な圧力による冷間加工が行われるので、鋼管の強度は大きく向上する反面、粘り強さに欠けることになります。
このため、必要によって熱処理を施す場合もあります。
冷間仕上鋼管の製造方法を表す記号として、以下の例のように、『C』を付記して表す場合があります。
- 冷間仕上電気抵抗溶接鋼管-E-C
- 冷間仕上継目無鋼管-S-C
- 冷間仕上自動アーク溶接鋼管-A-C
- 冷間仕上自動レーザー溶接鋼管-L-C
- 熱間仕上げ・冷間仕上げ以外の仕上げ
- 一般には製造したままの電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)。
熱間・冷間仕上げ以外の鋼管としては、一般には製造したままの電縫鋼管を指しますが、電縫鋼管は冷間で成形し、シーム部だけが局部的に加熱された状態で電気抵抗溶接で接合します。
そのため、パイプの表面性状などは素材の鋼帯の状態が活かされるので比較的良好になります。
熱間・冷間仕上げ以外の鋼管は、製造方法を表す記号として、以下の例のように、『G』を付記して表す場合があります。
- 熱間仕上・冷間仕上以外の電気抵抗溶接鋼管-E-G