鍛接鋼管の製造方法・特徴・用途など

ここでは鋼管(パイプ)の製造体系の一種であり、パイプの長手方向の継目(シーム)部分を、鍛接により接合してパイプに成形する鍛接鋼管について解説しています。

鍛接鋼管のシーム部


■ 鍛接鋼管の特徴・用途など

鍛接鋼管(Forge Welding Pipe/Blacksmith Welding Pipe)は、鋼管の製造方法の一種であり、鋼帯素材全体を加熱後、熱間で成形し、シーム部は鍛接によって接合してパイプに成形した鋼管です。

基本的に炭素鋼鋼管の製造に適用されて、主に呼び径が100A(4B)程度までの小口径の配管の製造に用いられるパイプです。

鍛接鋼管は、大量生産の製造に適した製造方法であり、生産性が良いですが、熱間加工により成形するため、パイプの内面や外面に酸化鉄の皮膜(スケール)が付着するなど、表面性状は余り良くありません。

鍛接鋼管は、パイプの表面に溶融亜鉛めっき処理を行い、水道管(水道用メッキ鋼管)やガス管(SGP白管)、プラスチックライニング鋼管などの用途に広く用いられます。

JISの配管としては、以下などのJIS規格の配管に用いられます。

  • JIS G 3443-1 水輸送用塗覆装鋼管−第1部:直管
  • JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管
  • JIS G 3445 機械構造用炭素鋼鋼管
  • JIS G 3452 配管用炭素鋼管
  • JIS G 3454 圧力配管用炭素鋼鋼管
  • JIS G 3460 低温配管用鋼管
  • JIS G 3464 低温熱交換器用鋼管
  • JIS G 3475 建築構造用炭素鋼管

鍛接鋼管の製造方法を表す記号としては、以下の例のように、『B』を付記して区別します。

  • 鍛接鋼管-B
  • 冷間仕上鍛接鋼管-B-C

■ 鍛接鋼管の製造方法・製造工程

鍛接鋼管の製造には素材として鋼帯(コイル材)を用います。

アンコイラーやレベラーなどの機械を用いて鋼帯を連続的に巻き戻しながら加熱炉を通過させることによって鍛接温度まで素材を加熱します。

加熱された鋼帯を成形ロールを通過させることによって、鋼帯の幅方向を円形に変形させることでパイプ形状に成形します。

円形に変形させたその両端を、エッジヒーターなどの機械により瞬間的に更に高温に加熱すると同時に、過酷な加圧力で強力に突き合わせることで両端を接合してパイプに成形します。
この接合の方法を鍛接と言います。

熱間成形されたパイプは、所定の長さに切断し、常温まで冷却された後、矯正機にかけられて所定の寸法に仕上げられます。

その後、面取りやねじ切りなどの管端処理、塗装やメッキ・マーキング表示・完成検査など、これら一連の工程に連続的にかけられて最終的に製品として仕上げられます。

鍛接鋼管の製造工程の一例としては、以下の模式図のようなフローになります。

鍛接鋼管の製造方法・製造工程の一例
【鍛接鋼管の製造方法・製造工程の一例】


■ 鍛接

鍛接とは、金属を接合する接合法の一種で、二つの金属材料の表面を密着させて、加熱と同時に打撃又は加圧して行う高温圧接のことです。
英語では Forge Welding または Blacksmith Welding と呼ばれます。

接合方法としては、鍛接も広義の意味では溶接であり、圧接(加圧溶接)の一種です。

圧接(加圧溶接)とは、固相接合法に分類される溶接方法であり、接合面を溶融させずに接合部(溶接継手)に機械的圧力を加えることで溶接する溶接法です。

鍛接のイメージ

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