電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)の製造方法・特徴・用途など
ここでは鋼管(パイプ)の製造体系の一種であり、パイプの長手方向の継目(シーム)部分を、電気抵抗溶接により溶接接合してパイプに成形する電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)について解説しています。
■ 電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)の特徴・用途など
電縫鋼管は、鋼管の製造方法の一種であり、一般には常温の鋼帯(コイル)を連続的に引き出しながら円形に成形し、シーム部を電気抵抗溶接によって溶接接合してパイプに成形した鋼管です。
多くは炭素鋼鋼管の製造に適用されていますが、ステンレス鋼や低合金鋼のパイプ製造にも適用されています。
鋼管サイズとしては、比較的小径の配管から中径配管まで製造が可能であり、比較的生産性の高い製造方法です。
最大で呼び径が650A(B呼称では28B:外径=660.4mm)程度までのパイプが製造されています。
電縫鋼管の製造にはたくさんの成形ロールが必要であるために、外径サイズの自由度は低いですが、継目部(シーム部)は電気抵抗溶接により素材を組織まで溶融して溶接しているので、鍛接鋼管に比べてシーム部の強度が高いパイプになります。
電縫鋼管のシーム部は、電気抵抗溶接による溶接ビード(溶接により表面や裏面に盛り上がる溶接金属)の発生が避けられませんが、常温の鋼帯(コイル)から成形し、シーム部以外は加熱することがないために表面性状は良好です。
溶接ビードは、使用用途によっては削り取って仕上げられます。
電縫鋼管の用途としては、石油、ガスなどを輸送するラインパイプ、水道管(水道配管)、ガス管、自動車他の機械構造用鋼管、ボイラー用鋼管などに広く用いられます。
JISの配管としては、以下などのJIS規格の配管に用いられます。
- JIS A 5525 鋼管ぐい
- JIS A 5530 鋼管矢板
- JIS C 8305 鋼製電線管
- JIS G 3441 機械構造用合金鋼鋼管
- JIS G 3443-1 水輸送用塗覆装鋼管−第1部:直管
- JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管
- JIS G 3445 機械構造用炭素鋼鋼管
- JIS G 3446 機械構造用ステンレス鋼鋼管
- JIS G 3447 ステンレス鋼サニタリー管
- JIS G 3448 一般配管用ステンレス鋼管
- JIS G 3452 配管用炭素鋼管
- JIS G 3454 圧力配管用炭素鋼鋼管
- JIS G 3456 高温配管用炭素鋼管
- JIS G 3459 配管用ステンレス鋼管
- JIS G 3460 低温配管用鋼管
- JIS G 3461 ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管
- JIS G 3462 ボイラ・熱交換器用合金鋼管
- JIS G 3463 ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管
- JIS G 3464 低温熱交換器用鋼管
- JIS G 3466 一般構造用角形鋼管
- JIS G 3472 自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管
- JIS G 3473 シリンダチューブ用炭素鋼鋼管
- JIS G 3474 鉄塔用高張力鋼管
- JIS G 3475 建築構造用炭素鋼管
電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)の製造方法を表す記号としては、以下の例のように、『E』を付記して区別します。
- 熱間仕上電気抵抗溶接鋼管-E-H
- 冷間仕上電気抵抗溶接鋼管-E-C
- 熱間仕上・冷間仕上以外の電気抵抗溶接鋼管-E-G
■ 電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)の製造方法・製造工程
電縫鋼管の製造には素材として常温の鋼帯(コイル材)を用います。
アンコイラーやレベラーなどの機械を用いて鋼帯を連続的に引き出し、突合せて溶接するための鋼帯の両側端面のエッジ処理を施します。
エッジ処理後、鋼帯の幅方向を円形に変形させることでパイプ形状に成形します。
接合直前に円形に変形させたその両端に、局部的に大電流を流すことで瞬間的に接合部を高温状態にして、そのまま押しつけて突き合わせ、電気抵抗溶接により溶接接合してパイプに成形します。
熱間成形されたパイプは、所定の長さに切断し、常温まで冷却された後、矯正機にかけられて所定の寸法に仕上げられます。
その後、面取りやねじ切りなどの管端処理、塗装やメッキ・マーキング表示・完成検査など、これら一連の工程に連続的にかけられて最終的に製品として仕上げられます。
電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)の製造工程の一例としては、以下の模式図のようなフローになります。
【電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)の製造方法・製造工程の一例】
■ 高周波抵抗溶接・高周波誘導圧接|電気抵抗溶接の方法
パイプのシーム部に用いられる電気抵抗溶接の以下のような溶接方法があります。
- 高周波抵抗溶接
高周波抵抗溶接は、抵抗溶接の一種で、溶接継手に加圧力を与えながら高周波電流による抵抗熱で接合を行う抵抗溶接です。
高周波抵抗溶接には、母材の溶接継手に供給する高周波電流の供給の仕方により、以下の参考図のように、接触子を用いて直接接合端縁に供給する高周波接触抵抗溶接と、コイルを用いて誘導によって供給する高周波誘導抵抗溶接とがあります(下図参照)。
英語では、
high frequency resistance welding;
high frequency contact resistance welding;
high frequency induction resistance welding;
induction welding;
HF resistance welding
などと言われます。
【高周波接触抵抗溶接(図a)と高周波誘導抵抗溶接(図b)の参考図】
- 高周波誘導圧接
高周波誘導圧接は、加圧とともに高周波誘導加熱を利用して行う溶接です。
高周波誘導圧接は、以下の参考図のように、高周波の誘導に棒状の誘導子を用いたり、コイルを用いる方法があります(下図参照)。
英語では、
high frequency induction welding;
induction welding
などと言われます。
【高周波誘導圧接の参考図】
なお、抵抗溶接とは、溶接継手部に大電流を流し、ここに発生する抵抗熱によって加熱し、圧力を加えて行う溶接全般を言います。