配管図面におけるフランジの記号例・製図方法
ここでは固定式管継手(フィッティング)の一種である配管フランジ(Flange)を、配管図面に製図する場合のフランジの図記号例、図面の描き方・製図方法について例を挙げてまとめています。
配管の状態を正投影法により二次元的に表現する組立図や平面配管図・立面配管図に図示する場合の配管フランジの記号や、等角図(アイソメ図)に図示する場合の配管フランジの記号、配管との接続方法の違いによるフランジの図記号など、それぞれの場合の製図方法を例を挙げて説明します。
■ フランジとは
フランジとは、英語では”Flange”と書き、配管継手の一種であり、パイプとパイプの接続や配管に繋がる機器類のノズルとの接続、バルブ・温度計・流量計器・液面計器などの各種計器との接続、或いはパイプの末端の閉止(閉鎖)などに使われる、以下の図のような形状をした、つば状の配管継手のことをいいます。
広義の意味でのフランジとは、円筒形あるいは部材からはみ出すように出っ張った部分のことなどを総称してフランジと呼ばれているので、H形鋼などのはり部材におけるフランジや自転車・鉄道車両の車輪などにおけるフランジなども、つば状の形状をしているという点においていずれも『フランジ』ということになりますが、ここで言うフランジとは、上記のような配管用の管継手としてのフランジのことを意味します。
配管用の管継手としてのフランジは、上記のような広義のフランジとは区別しないと混乱する場合などは、『フランジ継手』や『管フランジ』などと呼ばれており、特にJISにおいては、配管継手としてのフランジは、『管フランジ』という呼び名で各種のフランジが規定されています。
配管フランジは、以下の図のように円盤、或いは円盤と円筒を組み合わせた形状になっており、例えばパイプ同士を接続する場合には、円盤部分同士をボルト・ナットなどで締結することによって、パイプ同士を繋ぎ合わせます。
配管フランジは、粉体(スラリー)や粘性流体を扱う配管で配管内部の詰まりなどのために配管を取外してパイプ内部を清掃・メンテナンスする必要がある配管などによく用いられます。
一般に、フランジを用いた配管のフランジ接続は、ねじ込み接続に比べて、その漏れ・強度・作業性なども良好で信頼性もあり、分解・組立が容易であるなどのメリットがあります。
パイプとの接続方法の違いによりフランジ分類すると、主に以下の種類のフランジがあります。
- 突合せ溶接式フランジ(ウェルドネックフランジ:Weld Neck Flange)
- 差込み溶接式フランジ(スリップオンフランジ:Slip-On Flange)
- ソケット溶接式フランジ(ソケットウェルドフランジ:Socket Weld Flange)
- ねじ込み式フランジ(スレーデッドフランジ:Threaded Flange)
- 遊合形フランジ(ルーズフランジ:Loose Flange/ラップジョイント:Lapped Joint Flange)
■ 突合せ溶接式フランジとは
突合せ溶接フランジとは、ウェルドネックフランジとも言われ、石油・化学装置関連などには非常に多く使用されている溶接式フランジの一種です。
一般に、記号”WN”で表記されます。
突合せ溶接フランジは、パイプや配管部品類と直接溶接接続が可能であるため、溶接工数が少ない利点があり、また、熱応力や振動などの外力に対する強度も強い上に、突合せ溶接であるために内面の仕上がりも平滑であるという利点もあり、最も信頼のおけるフランジです。
一方で、他のフランジと比べてフランジ価格が高価なため溶接工数を含めても高価でありなどの欠点もあります。
■ 差込み溶接式フランジとは
差込み溶接フランジとは、スリップオンフランジとも言われ、溶接式フランジの一種で一般的に広く使われている接続方式のフランジです。
一般に、記号”SO”で表記されます(SOP、SOHなど)。
その形状は、上図のように、ハブのあるもの(ハブフランジ:SOH)とハブをもたないもの(板フランジ:SOP)があり、その呼び径などで分けられている場合もありますが、一般的には板フランジ(SOP)は小口径・低圧の配管系に使用されます。
差込み溶接フランジは、上図のようにフランジにパイプ・配管を差し込んでフランジの上面と、フランジ内径の内側をそれぞれ隅肉溶接して接続します。
JISフランジでは、呼び圧力20K及び30Kのスリップオンフランジ(ハブフランジ:SOH)には、A形、B形 及び C形 の3種類のハブフランジがあります。
■ ソケット溶接式フランジとは
ソケット溶接フランジとは、ソケットウェルドフランジとも言わる溶接式フランジの一種です。
一般に、記号”SW”で表記されます。
ソケット溶接フランジも差込み溶接式フランジと同様に、上図のようにフランジにパイプ・配管を差し込んで接続します。
ソケット溶接フランジの場合は、フランジ内径に段差があるため、その段にパイプを載せて、溶接はフランジの上面だけを隅肉溶接して取り付けます。
差込み溶接フランジでは、フランジのシート面を隅肉溶接の余盛などで傷つける恐れがあり、それを防止するために特に小口径配管・フランジの接続に用いられる場合が多いフランジです。
■ ねじ込み式フランジとは
ネジ込みフランジとは、スレーデッドフランジとも言われ、フランジに配管をねじ込んで接続するフランジです。
一般に、記号”TR”で表記されます。
ネジ込みフランジは、フランジ内径にテーパーめねじが切ってあり、パイプの先端部分にテーパーおねじを切った配管をねじ込んで接続します。
ネジ込みフランジは、溶接作業が不要で、そのコストがかかりませんが、ねじによる接続のため、シール性に信頼がおけず、主に小口径・低圧・常温の配管系のフランジなどに利用されます。
■ ラップジョイント形フランジとは(ルーズフランジとは)
ラップジョイント形フランジとは、遊合形フランジ、又は、ルーズフランジとも言われるフランジです。
一般に、記号”LJ”で表記されます。
ルーズフランジは、一般には、上図のようなスタブエンドと呼ばれるつば状の配管継手と組み合わせて使用され、スタブエンドのつばの無い側にパイプを突合せ溶接して、パイプとスタブエンドを接続します。
ルーズフランジとスタブエンドはスタブエンドのつば部分で引っかかりをもつだけなので、両者には拘束がなく、ルーズフランジは自由に回転することができます。
そのため、相手側のフランジにボルト・ナットで取り付ける際、配管自体をを軸方向に回転させることなく、ルーズフランジだけを回転させてルーズフランジのボルト穴の位置を自由に調整することができます。
ルーズフランジは、一般には以下のよう場合に使用されます。
- 腐食流体などを扱う配管で、その材料が高価であって、フランジもそのパイプ材質と同材質で作るとフランジが非常に高価になる場合。
- 銅や鉛などのように、フランジ材料としては不向きな場合。
- 接続する相手側が変わってその都度フランジボルト穴位置も変わるような場合。
上記のような用途に使われることから、一般にはルーズフランジ材質とパイプ材質とは異なる場合が多くなります。
ルーズフランジは、一般に溶接が不可能なパイプとの接合に用いられ、低圧・低温の、あまり危険のない配管などの接続に用いられます。
例えば、鋳鉄管、飲料水配管、計装用空気配管などの配管系に用いる亜鉛メッキ管などの接続に使用され、フランジ材質も可鍛鋳鉄が一般的材質になります。
■ 図示記号の配置の説明
以降に示すフランジ記号(フランジの書き方)の図示記号の配置の意味は次のようになります。
- A.平面図(上から正投影)及び立面図(側面から正投影)の1形での図示例
- B.平面図(上から正投影)及び立面図(側面から正投影)の2形での図示例
- C.等角図(アイソメ図):等角投影した図示例
■ 突合せ溶接式フランジの図示記号例・製図方法例
突合せ溶接式フランジを、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合の表示記号例を以下に示します。
- 【突合せ溶接式フランジ(ウェルドネックフランジ)の記号例】
■ 差込み溶接フランジの図示記号例・製図方法例
差込み溶接フランジを、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合の表示記号例を以下に示します。
- 【差込み溶接フランジ(スリップオンフランジ)の記号例】
■ ソケット溶接フランジの図示記号例・製図方法例
ソケット溶接フランジを、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合の表示記号例を以下に示します。
- 【ソケット溶接フランジ(ソケットウェルドフランジ)の記号例】
■ ねじ込みフランジの図示記号例・製図方法例
ネジ込みフランジを、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合の表示記号例を以下に示します。
- 【ネジ込みフランジ(スレーデッドフランジ)の記号例】
■ ラップジョイント形フランジ(ルーズフランジ)の図示記号例・製図方法例
ラップジョイント形フランジ(ルーズフランジ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合の表示記号例を以下に示します。
- 【ラップジョイント形フランジ(ルーズフランジ/遊合形フランジ)の記号例】
■ ブラインドフランジの図示記号例・製図方法例
ブラインドフランジ(閉止フランジ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合の表示記号例を以下に示します。
- 【ブラインドフランジ(閉止フランジ)の記号例】
- 備考1.
- 1形と2形のフランジ図記号は、配管径と図面との尺度を勘案して使い分けます。
ただし、同一配管系では、1形・2形の図記号を混用してはいけません。
なお、図面との縮尺にもよりますが、2形の図示記号は、一般的には呼び径14B(350A)くらいを境にしてそれより大きな配管径の場合に用いられます。
そのため、通常はネジ込み式フランジは、大径配管には使われないので、2形でネジ込み式フランジを図示することは一般にはありません。
アイソメ図(等角図)には1形・2形の区別はなく、基本的には実線で描かれます。