配管図面におけるバルブ記号・弁記号例・JIS製図方法
ここでは配管材料・部品の中でも最も重要な部品であるバルブ(弁)を、配管図面に製図する場合のバルブ・弁の図記号表示例、図面の書き方・製図方法について例を挙げてまとめています。
配管の状態を正投影法により二次元的に表現する組立図や平面配管図・立面配管図に図示する場合のバルブ記号や、等角図(アイソメ図)に図示する場合の弁図記号、配管との接続方法の違いによるバルブ図記号など、それぞれの場合の製図方法を例を挙げて説明します。
■ バルブとは(弁とは)
バルブとは、英語では”Valve”と書き、主に配管などの内部を通す空気やガスなどの気体、水や油などの液体、或いは粉体などの流体が通る空間の開閉や流体の制御及び調節などができる可動機構をもつ機器の総称のことをいいます。
”弁”とも言われますが、例えば、”玉形弁”や”仕切弁”などのように、用途・種類・形式などを表す修飾語が付くものに対して、”弁”という用語を用いるのが一般的です。
■ バルブ・弁の種類
バルブ・弁には、使用する目的や用途によって、さまざまな形式・形状・構造のバルブがあります。
構造・機能上、或いは使用目的などの点から分類すると、代表的なバルブ・弁には以下のような種類が挙げられます。
- ゲートバルブ(仕切弁)
- グローブバルブ(玉形弁)
- チャッキ弁/チェック弁(逆止弁/チャッキバルブ/チェックバルブ)
- コック(コック弁/コックバルブ)
- バタフライバルブ(バタフライ弁/バタ弁)
- アングル弁(アングルバルブ)
- Y形弁(Y形バルブ)
- ニードルバルブ(ニードル弁)
- ストップバルブ(止め弁/ストップ弁)
- ボールバルブ(ボール弁)
- フートバルブ(フート弁)
- ダイヤフラムバルブ(ダイヤフラム弁)
- プラグ弁(プラグ/プラグバルブ)
- 遠隔操作弁(遠隔操作バルブ)
- 電動弁(電動バルブ)
- 電磁弁(電磁バルブ)
- 自動制御弁(自動制御バルブ)
- 調整弁(調整バルブ)
- 減圧弁(減圧バルブ)
- 背圧弁(背圧バルブ)
- 差圧弁(差圧バルブ)
- 調節弁(コントロールバルブ)
- 安全弁(セーフティーバルブ)
- 逃し弁(リリーフバルブ/リリーフ弁)
- 空気弁(エアーバルブ)
- 呼吸弁(ブリーザー弁/ブリーザーバルブ)
- 急速弁
- 緊急弁
- 開放弁(オープンバルブ)
- 遮断弁(シャットバルブ)
- フロート弁(フロートバルブ)
- 定水位弁
配管・パイプなどへの接続方法(バルブの接続端)の違いによってバルブを分類すると、代表的なものには以下の種類のバルブ・弁があります。
- フランジ形バルブ(Flanged End type Valve)
- 差込み溶接形バルブ(ソケット溶接形バルブ)(Socket Welding End type Valve)
- ねじ込み形バルブ(Threaded End type Valve)
- 突合せ溶接形バルブ(Butt Welding End type Valve)
- ウェハー形バルブ(Wafer type Valve)
■ フランジ形バルブとは
フランジ形バルブとは、上図のようにバルブ接続端にフランジをもつバルブ・弁で、フランジはバルブ本体と一体となっているバルブと、本体にフランジを溶接して製造されるバルブとがあります。
フランジ形バルブは、接続する配管側にも取り付けられているフランジとの間にガスケットを挟み込んでボルト・ナットなどで固定します。
バルブ・弁のメンテナンス等の際には取外しも容易であり、一般的に最も広く使われているタイプのバルブ・弁です。
■ 差込み溶接形バルブとは
差込み溶接形バルブとは、ソケット溶接形バルブとも言われ、溶接形バルブの一種です。
差込み溶接形バルブは、上図のようにバルブ接続端はパイプが差し込める形状になっており、差し込んだ配管とバルブ端面の部分をパイプ全周にわたり隅肉溶接して接続します。
■ ねじ込み形バルブとは
ネジ込み形バルブとは、上図のようにバルブ接続端に配管をねじ込んで接続するバルブ・弁です。
ネジ込み形バルブの接続端には、管用ねじのめねじが切ってあり、パイプの先端部分におねじを切った配管をねじ込んで接続します。
バルブ接続端と配管端部に加工されているネジは一般にはテーパねじが使用されています。
ねじ込み形バルブは、溶接作業が不要で、そのコストがかかりませんが、ねじによる接続のため、シール性に信頼がおけず、主に小口径・低圧・常温の配管系のバルブ・弁などに利用されます。
■ 突合せ溶接形バルブとは
突合せ溶接形バルブとは、石油・化学装置関連などには非常に多く使用されている溶接形バルブの一種です。
突合せ溶接形バルブは、上図のように、バルブ接続端端面とパイプ端面とを突き合わせて、その部分をパイプ全周にわたり突合せ溶接(バットウェルド)して接続します。
一般には、バルブ接続端とパイプ接続端の両方に、開先が加工されています。
熱応力や振動などの外力に対する強度も強い上に、接続部の溶接不良がなければ内部流体の漏れを完全に防止することができ、シール性においても最も信頼のおけるバルブであるため、高温、高圧の配管系や、パイプラインなどに広く利用されますが、バルブ自体が高価であるのと、溶接工数も差込み溶接形バルブよりも高価になります。
■ ウェハー形バルブとは
ウェハー形バルブとは、上図のように、相フランジ間にバルブを挟みこんで配管に取り付けるタイプのバルブ・弁の総称です。
(上図は、シングルプレートウェハーチャッキ弁の例)
主なウェハータイプとして用いられるバルブには、チャッキ弁(逆止弁)やバタフライ弁などがあります。
■ 図示記号の配置の説明
以降に示すバルブ記号・弁記号(バルブ・弁の書き方)の図示記号の配置の意味は次のようになります。
- A.平面図:上から正投影した場合の図示例
- B.立面図(側面から見た図):A.平面図を手前上から正投影した場合の図示例
- C.立面図(側面から見た図):B.立面図を右側から正投影した場合の図示例
- D.等角図(アイソメ図):等角投影した図示例
■ 仕切弁記号(ゲートバルブ記号)の製図方法例
仕切弁(ゲートバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 仕切弁(ゲートバルブ)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 仕切弁(ゲートバルブ)の図記号例】
■ 玉形弁記号(グローブバルブ記号)の製図方法例
玉形弁(グローブバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 玉形弁(グローブバルブ)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 玉形弁(グローブバルブ)の図記号例】
■ 逆止弁記号(チャッキ弁記号)の製図方法例
逆止弁(チャッキ弁)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 逆止弁(チャッキ弁)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 逆止弁(チャッキ弁)の図記号例】
- 【ウェハー形逆止弁(チャッキ弁)の図記号例】
■ アングル弁記号の製図方法例
アングル弁(アングルバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 アングル弁の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 アングル弁の図記号例】
■ ボール弁記号(ボールバルブ記号)の製図方法例
ボール弁(ボールバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 ボール弁(ボールバルブ)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 ボール弁(ボールバルブ)の図記号例】
■ バタフライ弁記号(バタフライバルブ記号)の製図方法例
バタフライ弁(バタフライバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 バタフライ弁(バタフライバルブ)の図記号例】
- 【ウェハ形バタフライ弁(バタフライバルブ)の図記号例】
■ プラグ弁記号の製図方法例
プラグ弁(プラグバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 プラグ弁の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 プラグ弁の図記号例】
■ ダイヤフラム弁記号(ダイヤフラムバルブ記号)の製図方法例
ダイヤフラム弁(ダイヤフラムバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 ダイヤフラム弁(ダイヤフラムバルブ)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 ダイヤフラム弁(ダイヤフラムバルブ)の図記号例】
■ 安全弁記号(セーフティーバルブ記号)の製図方法例
安全弁(セーフティーバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 安全弁(セーフティーバルブ)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 安全弁(セーフティーバルブ)の図記号例】
■ ニードル弁記号(ニードルバルブ記号)の製図方法例
ニードル弁(ニードルバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 ニードル弁(ニードルバルブ)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 ニードル弁(ニードルバルブ)の図記号例】
■ フート弁記号(フートバルブ記号)の製図方法例
フート弁(フートバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 フート弁(フートバルブ)の図記号例】
■ Y型弁記号の製図方法例
Y型弁(Y型バルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 Y型弁の図記号例】
■ ブリーザー弁記号(ブリーザーバルブ記号)の製図方法例
ブリーザー弁(ブリーザーバルブ/呼吸弁)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 ブリーザー弁(ブリーザーバルブ/呼吸弁)の図記号例】
■ 調節弁記号(コントロールバルブ記号)の製図方法例
調節弁(コントロールバルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 調節弁(コントロールバルブ)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 調節弁(コントロールバルブ)の図記号例】
- 【フランジ形 調節弁(バタフライ形)の図記号例】
- 【フランジ形 調節弁(アングル形)の図記号例】
- 【差込み溶接形及びねじ込み形 調節弁(アングル形)の図記号例】
■ ジャケット付弁記号の製図方法例
ジャケット付弁(ジャケット付バルブ)を、正投影法により平面図及び立面図の配管図面や、等角投影によりアイソメ図(等角図)に製図する場合のバルブ図記号例を以下に示します。
- 【フランジ形 ジャケット付弁の図記号例】
- 備考1.
- 上図のジャケット付弁は、仕切弁(ゲートバルブ)の場合を示しています。
バルブ形式が異なる場合は、それぞれのバルブ記号にジャケットを示す四角形を組み合わせて表します。 - 備考2.
- 突合せ溶接形バルブの場合のバルブ記号は、以下の仕切弁(ゲートバルブ)の例のように、突合せ溶接を示す黒丸(●)によって表現されるのが一般的です。
(バルブ形式が異なる場合も同様。)
- 【突合せ溶接形 仕切弁(ゲートバルブ)の図記号例】
■ バルブ操作部の弁記号・製図方法例
バルブの操作部を特に表す必要がある場合のバルブ記号は、正投影法による平面図及び立面図の配管図面やアイソメ図(等角図)に製図する場合には、以下のようなバルブ図記号により図示します。
- 【電動弁の操作部の図記号例】
- 【空気作動弁の操作部の図記号例】
- 【歯車操作弁の操作部の図記号例】
- 【チェーン操作弁の操作部の図記号例】
■ その他のバルブ(油圧・空気圧システムのバルブ)弁記号・製図方法例
その他のバルブとして、油圧・空気圧システムに使用されるバルブを表示するための各種バルブ記号の図記号・製図例を以下に示します。
なお、図中の番号は、それぞれ図の下に記載しているバルブ・弁であることを表しています。
- 【方向制御弁の図記号例】
1.2ポート2位置方向制御弁(押し操作、スプリングリターン、ノーマルクローズ)
2.2ポート2位置方向制御弁(電磁操作、スプリングリターン、ノーマルオープン)
3.4ポート2位置方向制御弁(電磁操作、スプリングリターン)
4.3ポート2位置錠付ロックアウト弁
5.3ポート2位置方向制御弁(ローラレバー操作、スプリングリターン)
6.3ポート2位置方向制御弁(電磁操作、スプリングリターン)
7.3ポート2位置方向制御弁(電磁操作、スプリングリターン、ロック付手動オーバライド)
8.4ポート2位置方向制御弁(電磁操作、スプリングリターン、ロック付手動オーバライド)
9.4ポート2位置方向制御弁(電磁操作、両ソレノイド、デテント付)
10.4ポート2位置方向制御弁(電磁・油圧パイロット操作、スプリングリターン)
11.4ポート3位置方向制御弁(電磁・油圧パイロット操作、スプリングセンタ、外部パイロット、外部ドレン)
12.4ポート3位置方向制御弁(電磁操作、スプリングセンタ、各種センタ位置)
13.4ポート2位置方向制御弁(油圧パイロット操作、スプリングリターン)
14.4ポート3位置方向制御弁(油圧パイロット操作、スプリングセンタ)
15.5ポート2位置方向制御弁(両ぎきペダル操作)
16.5ポート3位置方向制御弁(レバー操作、デテント付)
17.3ポート2位置電磁ポペット弁(リミットスイッチ付)
18.3ポート2位置電磁ポペット弁(スプリングリターン)
- 【圧力制御弁の図記号例】
1.リリーフ弁(直動形又は一般記号)
2.シーケンス弁
3.シーケンス弁(チェック弁付)
4.減圧弁(直動形又は一般記号)
5.パイロット作動方減圧弁(外部ドレン)
6.ブレーキ弁
7.アンロードリリーフ弁
8.パイロット作動形リリーフ弁(電磁弁付)
9.リリーフ付減圧弁
- 【流量制御弁の図記号例】
1.可変絞り弁
2.可変絞り弁(チェック弁付)
3.デセラレーション弁、可変絞り弁(ローラプランジャ操作)
4.チェック弁付流量調整弁
5.フロープライオリティ弁
6.分流弁
7.集流弁
- 【チェック弁及びシャトル弁の図記号例】
1.チェック弁(ばねなし)
2.チェック弁(ばね付)
3.パイロット操作チェック弁
4.パイロット操作ダブルチェック弁
5.シャトル弁
- 【比例方向制御弁の図記号例】
1.比例方向制御弁(直動形、4ポート3位置、スプリングセンタ)
2.比例方向制御弁(直動形、4ポート2位置、スプリングリターン)
3.比例方向制御弁(パイロット操作、主弁及びパイロット弁の位置フィードバック、アンプ付)
4.サーボ弁(主弁及びパイロット弁の位置フィードバック、アンプ付)
5.サーボ弁(パイロット操作、パイロット弁のメカニカルフィードバック、アンプ付)
6.電気・油圧リニアドライブ(メカニカルフィードバック付シリンダ・サーボ弁・ステッピングモータから構成)
7.サーボ弁(停電時位置保持機能、電気フィードバック、アンプ付)
- 【比例圧力制御弁の図記号例】
1.比例リリーフ弁(直動形、電磁操作、ばね制御式)
2.比例リリーフ弁(直動形、電磁操作、アンプ付)
3.比例リリーフ弁(直動形、電磁操作、閉ループ位置検出及びアンプ付)
4.比例リリーフ弁(パイロット作動形、電磁操作、ソレノイド位置電気的検出機能付)
5.3ポート比例減圧弁(電磁操作、閉ループ位置検出及びアンプ付)
6.比例リリーフ弁(パイロット作動形、電磁操作、手動圧力調整又は最高圧リリーフ機能、アンプ付)
- 【比例流量制御弁の図記号例】
1.比例流量制御弁(直動形)
2.比例流量制御弁(直動形、閉ループ位置検出及びアンプ付)
3.流量制御弁(パイロット作動形、メイン及びパイロットステージ位置フィードバック、アンプ付)
4.可変オリフィス形流量制御弁(比例ソレノイド操作、粘度に影響されない。)