STPT370・STPT410・STPT480(高温配管用炭素鋼管)の配管サイズ、重量等

ここでは350℃を超える温度で使用する高温用の配管に用いる炭素鋼管(STPT370、STPT410及びSTPT480)の配管サイズ寸法・径、重量、寸法許容差、肉厚(厚さ)、特性などの資料をまとめています。

JISでは外径の標準寸法サイズは、10.5mm〜660.4mmの範囲まで(呼び径が1/8B〜26Bの範囲まで)、配管肉厚は呼び厚さが Sch10〜Sch160 のスケジュールパイプが規定されています。


■ STPT-高温配管用炭素鋼管の種類や表示記号等

高温配管用炭素鋼管は、使用温度350℃以上の高温流体輸送の配管に用いられる鋼管です。

配管サイズ・寸法の呼び方は、『呼び径×呼び厚さ』で表されます。

呼び厚さには、スケジュール番号(Sch番号)が用いられています。

例:150A×Sch80 (又は 6B×Sch80)

JIS規格においては、以下のJISで規定されている配管になります。

  • JIS G 3456 高温配管用炭素鋼管

高温配管用炭素鋼管のJISに類似する対応外国規格(海外規格)には以下などがあります。
・ASTM A106、A672
・BS 3602
・DIN 17175、17177

高温配管用炭素鋼管の種類には、STPT370STPT410 及び STPT480 の3種類があります。

また、STPT370・STPT410・STPT480鋼管の製造方法・仕上方法を表す記号にはそれぞれ以下が用いられます。

製造方法を表す記号
・継目無し:S
・電気抵抗溶接:E
仕上方法を表す記号
・熱間仕上げ:H
・冷間仕上げ:C
・熱間仕上げ・冷間仕上げ以外:G

STPT370・STPT410・STPT480パイプの製品表示は、上記の記号を組み合わせて使い、以下のように表示されます。

  • 熱間仕上継目無鋼管(熱間仕上シームレスパイプ) -S-H
  • 冷間仕上継目無鋼管(冷間仕上シームレスパイプ) -S-C
  • 熱間仕上・冷間仕上以外の電気抵抗溶接鋼管 -E-G
  • 熱間仕上電気抵抗溶接鋼管(熱間仕上電縫鋼管) -E-H
  • 冷間仕上電気抵抗溶接鋼管(冷間仕上電縫鋼管) -E-C

例:冷間仕上継目無鋼管STPT370 の場合 : STPT370-S-C


■ 製造方法、化学成分、機械的性質等

STPT370・STPT410・STPT480鋼管の製造方法、化学成分、機械的性質などは以下のような仕様となっています(JIS規格より)。

製造方法
製造方法は、粗粒のキルド鋼を用いて継目無鋼管(シームレスパイプ)、若しくは電気抵抗溶接鋼管(電縫鋼管) として製造します。
ただし、STPT480 は、継目無鋼管(シームレスパイプ)として製造します(電気抵抗溶接では製造しません)。

継目無鋼管(シームレスパイプ)と電気抵抗溶接鋼管(電縫鋼管)

パイプは以下の熱処理を施します。ただし、以下の方法以外の熱処理については、受渡当事者間の協定によることなっています。

STPT370、STPT410及びSTPT480の熱間仕上継目無鋼管の場合
製造のまま。
ただし、必要に応じ、低温焼なまし又は焼ならしを施すことができる。
STPT370、STPT410及びSTPT480の冷間仕上継目無鋼管の場合
低温焼なまし又は焼ならし。
STPT370及びSTPT410の熱間仕上電気抵抗溶接鋼管の場合
製造のまま。
ただし、必要に応じ、低温焼なまし又は焼ならしを施すことができる。
STPT370及びSTPT410の熱間仕上以外の電気抵抗溶接鋼管の場合
低温焼なまし又は焼ならし。

パイプの両端は、注文者の指定があればベベルエンドに加工してもよいことになっていますが、特に指定のない限り、厚さ(パイプ肉厚)22mm以下のパイプのベベルエンドの形状は以下となります。

パイプ両端のベベルエンドの形状

化学成分
STPT370・STPT410・STPT480パイプの化学成分(溶鋼分析値)は、分析試験が行われ、以下の数値となります。

STPT370
・C:0.25%以下
・Si:0.10〜0.35%
・Mn:0.30〜0.90%
・P:0.035%以下
・S:0.035%以下

STPT410
・C:0.30%以下
・Si:0.10〜0.35%
・Mn:0.30〜1.00%
・P:0.035%以下
・S:0.035%以下

STPT480
・C:0.33%以下
・Si:0.10〜0.35%
・Mn:0.30〜1.00%
・P:0.035%以下
・S:0.035%以下

また、製品分析値については、注文者が要求する場合に試験を行い、その値は、上記の化学成分(溶鋼分析値)によりますが、上記の値に対する許容変動値は、JIS G 0321(鋼材の製品分析方法及びその許容変動値)に従います。

機械的性質
STPT370・STPT410・STPT480配管は、引張強さ、降伏点又は耐力、及び伸びに関して引張試験が行われ、それぞれ以下の数値となります(伸びの数値は割愛)。

STPT370
・引張強さ(N/mm2):370以上
・降伏点又は耐力(N/mm2):215以上

STPT410
・引張強さ(N/mm2):410以上
・降伏点又は耐力(N/mm2):245以上

STPT480
・引張強さ(N/mm2):480以上
・降伏点又は耐力(N/mm2):275以上

なお、外径40mm未満のパイプについては、上記の値は適用されません。

そのほか、JISにはへん平性や曲げ性についても規定があります。


■ STPT370・STPT410・STPT480の配管サイズ・径・厚さ・重量、寸法許容差

STPT370・STPT410・STPT480パイプの配管サイズ寸法・径、呼び厚さ(肉厚)ごとの、単位重量(質量)は以下の表になります。

STPT370・STPT410・STPT480高温配管用炭素鋼管のサイズ・径・厚さ・重量
(クリックで拡大)
STPT370・STPT410・STPT480高温配管用炭素鋼管のサイズ・径・厚さ・重量

配管外径・肉厚・重量

特に、上記のサイズ表以外の寸法を必要とする場合は、受渡当事者間の協定によることになります。

単位重量(質量)の数値は、1cm3 の鋼を 7.85g とし、以下の式によって計算される数値です。

W=At(D−t)

ここに、
W:管の単位質量(kg/m)
t:管の厚さ(mm)
D:管の外径(mm)
A:Wを求めるための単位の変換係数で、A=0.02466

寸法許容差
STPT370・STPT410・STPT480配管の外径サイズ、厚さ(肉厚)及び偏肉の寸法許容差は、それぞれ以下となります。
なお、パイプの長さに指定がある場合は、長さの寸法許容差は、その指定長さ以上となります。

【熱間仕上継目無管の場合】

■外径の許容差:
・外径50mm未満:±0.5mm
・外径50mm以上 160mm未満:±1%
・外径160mm以上 200mm未満:±1.6mm
・外径200mm以上:±0.8%
ただし、外径350mm以上は周長によってもよく、その場合の許容差は±0.5%とする。

■厚さの許容差:
厚さ 4mm未満:±0.5mm
厚さ 4mm以上:±12.5%

■偏肉の許容差:厚さの20%以下

【冷間仕上継目無管の場合】

■外径の許容差:
・外径40mm未満:±0.3mm
・外径40mm以上:±0.8%
ただし、外径350mm以上は周長によってもよく、その場合の許容差は±0.5%とする。

■厚さの許容差:
厚さ 2mm未満:±0.2mm
厚さ 2mm以上:±10%

■偏肉の許容差:−

偏肉とは、同一断面における測定厚さの最大と最小との差の注文厚さに対する割合をいい、厚さ5.6mm未満のパイプには適用されません。
なお、手入部などの局所的な部分については、厚さが上記の許容差を満足していることが確認できる場合には、上記の外径の許容差は適用されません。
また、外径の測定に周長を用いる場合の判定は、周長実測値又は周長実測値の換算外径のいずれかによっても良く、いずれも同一許容差(±0.5%)を適用します。
この場合、外径(D)と周長(l)の相互換算は、次の式によって計算されます。

l=π×D
l:周長(mm)、π=3.1416、D:外径(mm)

関連ページ・参考サイト

SGP-配管用炭素鋼管のサイズ,径
ガス管(SGP-配管用炭素鋼管)の配管のサイズ、重量、寸法許容差について。SGP配管(黒管・白管)の用途、製造方法、記号など。
STPY400-配管用アーク溶接炭素鋼鋼管のサイズ,径
STPY400配管用アーク溶接炭素鋼鋼管の外径サイズ、重量、厚さ(肉厚)、寸法許容差、機械的性質、化学成分などについて。
STPG-圧力配管用炭素鋼鋼管のサイズ,重量等
STPG370・STPG410パイプの配管サイズ・径、重量、厚さ、寸法許容差、表示記号、機械的性質、化学成分などについて。
STS-高圧配管用炭素鋼鋼管のサイズ,重量等
STS370・STS410・STS480パイプの配管サイズ・径、重量、厚さ、寸法許容差、表示記号、機械的性質、化学成分などについて。
STPA-配管用合金鋼鋼管のサイズ,重量等
STPTAパイプ(STPA12・22・25等)の配管サイズ・径、重量、厚さ、寸法許容差、表示記号、機械的性質、化学成分などについて。
STPL-低温配管用鋼管のサイズ,重量等
STPL380・STPL450・STPL690パイプの配管サイズ・径、重量、厚さ、寸法許容差、表示記号、機械的性質、化学成分などについて。
SUS304TP等-ステンレスパイプのサイズ,重量,成分等
SUS304TPやSUS316TP等、配管用ステンレスパイプの鋼管サイズ・径、重量、厚さ、鋼種表示記号、機械的性質、化学成分などについて。
SUS304TPY等-溶接大径ステンレスパイプのサイズ,重量等
SUS304TPYやSUS316TPY等、配管用溶接大径ステンレスパイプの鋼管サイズ・径、重量、厚さ、鋼種記号、機械的性質、化学成分など。
サニタリー配管の管サイズ,規格等
食品工業などで利用されるSUS304TBS等 ステンレス鋼サニタリー管の規格・配管サイズなど。
一般配管用ステンレス鋼管のサイズ,規格等
給水、給湯などの配管で利用されるSUS304TPD等、一般配管用ステンレスパイプの規格・配管サイズなど。
ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管(STB)のサイズ等
ボイラの水管、熱交換器等に使われる熱交換用鋼管 STB340、STB410及びSTB510パイプの規格・配管サイズなど。
ボイラ・熱交換器用合金鋼管(STBA)のサイズ等
STBA12,STBA13,STBA20,STBA22,STBA23,STBA24,STBA25 及び STBA26 合金鋼管の規格・配管サイズなど。
SUS304TB等-ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管のサイズ等
SUS304TB・SUS304LTB・SUS316TB・SUS316LTB等ステンレスパイプの配管サイズ、規格など。
STBL-低温熱交換器用鋼管・チューブのサイズ等
STBL380・STBL450・STBL690鋼管・チューブの配管サイズ、重量、規格など。
加熱炉用鋼管・チューブのサイズ,重量等
STF410・STFA22・SUS304TF等 加熱炉用鋼管・チューブの配管サイズ、重量、規格など。
配管の呼び径・外径
呼び径(呼称口径)やJIS配管とANSI配管の外径の違いなど。
配管肉厚,寸法表など
配管(パイプ)の肉厚に関する説明。スケジュール番号方式の説明やパイプ肉厚寸法表など。
配管用鋼管|用途別種類
鋼管を用途別に分類した場合の配管用鋼管について。各種炭素鋼鋼管(SGP、STPY、STPG、STS、STPT、STPA、STPL等)やステンレスパイプ(SUS304-TP、SUS304-TPY等)など。
継目無鋼管(シームレス鋼管)
継目無鋼管(シームレス鋼管:Seamless Pipe)の製造方法・特徴・用途など
電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管)
電縫鋼管の製造方法・特徴・用途など