STPL380・STPL450・STPL690(低温配管用鋼管)の配管サイズ、重量等
ここでは氷点以下の特に低い温度で使用する低温用の配管に用いる配管用鋼管(STPL380、STPL450及びSTPL690)の配管サイズ寸法・径、重量、寸法許容差、肉厚(厚さ)、特性などの資料をまとめています。
JISでは外径の標準寸法サイズは、10.5mm〜660.4mmの範囲まで(呼び径が1/8B〜26Bの範囲まで)、配管肉厚は呼び厚さが Sch10〜Sch160 のスケジュールパイプが規定されています。
■ STPL-低温配管用鋼管の種類や表示記号等
低温配管用鋼管は、主に使用温度−15℃程度以下で氷点以下の低温におけるLNGプラント用、冷凍工業用、化学工業用などの低温流体輸送等の低温配管に用いられる鋼管です。
配管サイズ・寸法の呼び方は、『呼び径×呼び厚さ』で表されます。
呼び厚さには、スケジュール番号(Sch番号)が用いられています。
例:300A×Sch40 (又は 12B×Sch40)
JIS規格においては、以下のJISで規定されている配管になります。
- JIS G 3460 低温配管用鋼管
なお、JIS G 3459(配管用ステンレス鋼管)に規定されるSUS304TP、SUS316TP等の配管用ステンレスパイプと、JIS G 3468(配管用溶接大径ステンレス鋼管)のSUS304TPY、SUS316TPY等の配管用溶接大径ステンレスパイプに代表されるオーステナイト系ステンレス鋼管は、低温配管用鋼管として使用することができることが規定されています。
低温配管用鋼管のJISに類似する対応外国規格(海外規格)には以下などがあります。
・ASTM A333、A671
・BS 3603
低温配管用鋼管の種類には、STPL380(炭素鋼鋼管)、STPL450(ニッケル鋼鋼管) 及び STPL690(ニッケル鋼鋼管) の3種類があります。
また、STPL380・STPL450・STPL690鋼管の製造方法・仕上方法を表す記号にはそれぞれ以下が用いられます。
- 製造方法を表す記号
- ・継目無し:S
・電気抵抗溶接:E (STPL380にのみ適用され、STPL450とSTPL690には適用されない) - 仕上方法を表す記号
- ・熱間仕上げ:H
・冷間仕上げ:C
・電気抵抗溶接まま:G
STPL380・STPL450・STPL690パイプの製品表示は、上記の記号を組み合わせて使い、以下のように表示されます。
- 熱間仕上継目無鋼管(熱間仕上シームレスパイプ) -S-H
- 冷間仕上継目無鋼管(冷間仕上シームレスパイプ) -S-C
- 電気抵抗溶接まま鋼管 -E-G
- 熱間仕上げ電気抵抗溶接鋼管(熱間仕上電縫鋼管) -E-H
- 冷間仕上げ電気抵抗溶接鋼管(冷間仕上電縫鋼管) -E-C
例:冷間仕上継目無鋼管STPL380 の場合 : STPL380-S-C
■ 製造方法、化学成分、機械的性質等
STPL380・STPL450・STPL690鋼管の製造方法、化学成分、機械的性質などは以下のような仕様となっています(JIS規格より)。
- 製造方法
- 製造方法は、細粒のキルド鋼を用いて、STPL380は、継目無鋼管(シームレスパイプ)、若しくは電気抵抗溶接鋼管(電縫鋼管) として製造します。
STPL450とSTPL690は、継目無鋼管(シームレスパイプ)として製造します(電気抵抗溶接では製造しません)。
パイプには以下の熱処理を施します。ただし、冷間仕上げをしたパイプは、冷間仕上げ後に以下の熱処理を行います。
また、以下の方法以外の熱処理については、受渡当事者間の協定によることなっています。
パイプの両端は、注文者の指定があればベベルエンドに加工してもよいことになっていますが、特に指定のない限り、厚さ(パイプ肉厚)22mm以下のパイプのベベルエンドの形状は以下となります。
- 化学成分
- STPL380・STPL450・STPL690パイプの化学成分(溶鋼分析値)は、分析試験が行われ、以下の数値となります。
【STPL380】
・C:0.25%以下
・Si:0.35%以下
・Mn:1.35%以下
・P:0.035%以下
・S:0.035%以下
・Ni:−
【STPL450】
・C:0.18%以下
・Si:0.10〜0.35%
・Mn:0.30〜0.60%
・P:0.030%以下
・S:0.030%以下
・Ni:3.20〜3.80%
【STPL690】
・C:0.13%以下
・Si:0.10〜0.35%
・Mn:0.90%以下
・P:0.030%以下
・S:0.030%以下
・Ni:8.50〜9.50%
※STPL380については、衝撃試験を実施しない場合、0.010%以上の酸可溶性アルミニウムを含有しなければなりません。
酸可溶性アルミニウムの代わりに全アルミニウムを分析してもよく、この場合の含有量は、0.015%以上となります。
製品分析値については、注文者が要求する場合に試験を行い、上記の化学成分(溶鋼分析値)の値に対する許容変動値は、JIS G 0321(鋼材の製品分析方法及びその許容変動値)に従います。
STPL380の継目無鋼管は、JIS G 0321 の表3、電気抵抗溶接鋼管は、JIS G 0321 の表2 によります。
また、STPL450及びSTPL690のパイプは、JIS G 0321 の表4によります。
- 機械的性質
- STPL380・STPL450・STPL690配管は、引張強さ、降伏点又は耐力、及び伸びに関して引張試験が行われ、それぞれ以下の数値となります(伸びの数値は割愛)。
【STPL380】
・引張強さ(N/mm2):380以上
・降伏点又は耐力(N/mm2):205以上
【STPL450】
・引張強さ(N/mm2):450以上
・降伏点又は耐力(N/mm2):245以上
【STPL690】
・引張強さ(N/mm2):690以上
・降伏点又は耐力(N/mm2):520以上
そのほか、JISにはへん平性や曲げ性についても規定があります。
■ STPL380・STPL450・STPL690の配管サイズ・径・厚さ・重量、寸法許容差
STPL380・STPL450・STPL690パイプの配管サイズ寸法・径、呼び厚さ(肉厚)ごとの、単位重量(質量)は以下の表になります。
特に、上記のサイズ表以外の寸法を必要とする場合は、受渡当事者間の協定によることになります。
単位重量(質量)の数値は、1cm3 の鋼を 7.85g とし、以下の式によって計算される数値です。
W=At(D−t)
ここに、
W:管の単位質量(kg/m)
t:管の厚さ(mm)
D:管の外径(mm)
A:Wを求めるための単位の変換係数で、A=0.02466
- 寸法許容差
- STPL380・STPL450・STPL690配管の外径サイズ、厚さ(肉厚)及び偏肉の寸法許容差は、それぞれ以下となります。
なお、パイプ長さの寸法許容差は、特に指定のない限り、注文長さ以上となります。
【熱間仕上継目無管の場合】
■外径の許容差:
・外径50mm未満:±0.5mm
・外径50mm以上 160mm未満:±1%
・外径160mm以上 200mm未満:±1.6mm
・外径200mm以上:±0.8%
ただし、外径350mm以上は周長によってもよく、その場合の許容差は±0.5%とする。
■厚さの許容差:
厚さ 4mm未満:±0.5mm
厚さ 4mm以上:±12.5%
■偏肉の許容差:厚さの20%以下
【冷間仕上継目無管及び電気抵抗溶接鋼管の場合】
■外径の許容差:
・外径40mm未満:±0.3mm
・外径40mm以上:±0.8%
ただし、外径350mm以上は周長によってもよく、その場合の許容差は±0.5%とする。
■厚さの許容差:
厚さ 2mm未満:±0.2mm
厚さ 2mm以上:±10%
■偏肉の許容差:−
注記1)
焼入れ焼戻し熱処理を施したパイプの外径の許容差は、外径50mm以上の熱間仕上継目無鋼管及び外径30mm以上の冷間仕上継目無鋼管の場合、±1%とします。
注記2)
外径の測定に周長を用いる場合の判定は、周長実測値又は実測値の換算外径のいずれかによっても良く、いずれも同一許容差(±0.5%)を適用します。
この場合、外径(D)と周長(l)の相互換算は、次の式によって計算されます。
l=π×D
l:周長(mm)、π=3.1416、D:外径(mm)
注記3)
手入部などの局所的な部分については、厚さの許容差が上記の許容差を満足していることが確認できる場合には、上記の外径の許容差は適用されません。
注記4)
偏肉とは、同一断面における測定厚さの最大と最小との差の注文厚さに対する割合をいい、偏肉の許容差は、厚さ5.6mm未満のパイプには適用されません。