SUS304TPY等 溶接大径ステンレスパイプの鋼管サイズ,重量,成分,記号,種類等

ここでは耐食用、低温用、高温用などの大口径の溶接配管に用いられ、SUS304TPYやSUS316TPYに代表される配管用溶接大径ステンレスパイプ(ステンレス鋼管)の鋼管サイズ寸法・径、重量、ステンレス鋼種記号、寸法許容差、肉厚(厚さ)、化学成分・特性などの資料をまとめています。

JISでは外径の標準寸法サイズは、165.2mm〜1016.0mmの範囲まで(呼び径が6B〜40Bの範囲まで)、配管肉厚は呼び厚さが Sch5S、Sch10S、Sch20S 及び Sch40 のスケジュールパイプが規定されています。


■ 溶接大径ステンレスパイプの規格、材料・材質種類、記号等

SUS304TPYやSUS316TPYなどの溶接大径ステンレスパイプ・鋼管は、耐食性、耐熱性、耐高温酸化性、極低温特性などに優れた配管であり、大口径の溶接鋼管として、パイプの価格は高価ですが化学プラント・LNGプラント用、冷凍工業用、石油化学工業用など幅広い用途で用いられる鋼管・パイプです。

配管サイズ・寸法の呼び方は、『呼び径×呼び厚さ』で表されます。

呼び厚さには、スケジュール番号(Sch番号)が用いられています。

例:800A×Sch20S (又は 32B×Sch20S)

JIS規格においては、以下のJISで規定されている配管になります。

  • JIS G 3468 配管用溶接大径ステンレス鋼管

配管用溶接大径ステンレスパイプのJISに類似する対応外国規格(海外規格)には以下などがあります。
・ASTM A312、A376、A409、A358
・BS 3605
・DIN 2462、2463、17440

JIS規格に規定される配管用溶接大径ステンレスパイプの種類には、15種類の溶接大径SUSパイプがあり、それぞれの材質・材料記号(大径溶接ステンレスパイプの鋼種)及び熱処理方法などは以下の通りです。

【オーステナイト系溶接大径ステンレスパイプ】

  • SUS304TPY:1010℃以上にて固溶化熱処理、急冷
  • SUS304LTPY:1010℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS309STPY:1030℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS310STPY:1030℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS315J1TPY:1010℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS315J2TPY:1010℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS316TPY:1010℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS316LTPY:1010℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS317TPY:1010℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS317LTPY:1010℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS321TPY:920℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS347TPY:980℃以上で固溶化熱処理、急冷

【オーステナイト・フェライト系溶接大径ステンレスパイプ】

  • SUS329J1TPY:950℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS329J3LTPY:950℃以上で固溶化熱処理、急冷
  • SUS329J4LTPY:950℃以上で固溶化熱処理、急冷

なお、SUS321TPY、SUS347TPY については、安定化熱処理を指定してもよく、この場合の熱処理温度は、850〜930℃とされています。

また、上記の溶接大径ステンレスパイプの種類の記号(ステンレス鋼種)の末尾”TPY”を除く記号は、以下のJIS規格の種類の記号に対応しています。

  • JIS G 4304(熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)
  • JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)

上記のSUS304TPYやSUS316TPYに代表される溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の製造方法を表す記号にはそれぞれ以下が用いられます。

製造方法を表す記号
自動アーク溶接ステンレスパイプ:A
レーザー溶接ステンレスパイプ:L

この記号を用いて、SUS304TPYやSUS316TPYなどの溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の製品表示は、以下のように表示されます。

  • 自動アーク溶接鋼管 -A
  • レーザー溶接鋼管 -L

例:自動アーク溶接ステンレスパイプ SUS304TPY の場合 : SUS304TPY-A


■ 溶接大径ステンレスパイプの材料、製造方法、熱処理など

JIS規格におけるSUS304TPYやSUS316TPYなどの溶接大径ステンレスパイプ・鋼管に使用される材料や製造方法、熱処理などは以下のような仕様となっています。

溶接大径ステンレスパイプの材料
SUS304TPYなどの配管用溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の製造に使用される材料は、JIS G 4304(熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)若しくは、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)に規定される鋼板又は鋼帯が使用されます。
ただし、固溶化熱処理を行う場合には、鋼板及び鋼帯での熱処理は省略しても良いことになっています。
溶接大径ステンレスパイプの製造方法
SUS304TPYやSUS316TPYなどの溶接大径ステンレスパイプ・鋼管は、自動アーク溶接、若しくはレーザー溶接によって製造します。
ただし、自動アーク溶接は、原則として溶加材を使用したアーク溶接を行います。

自動アーク溶接又はレーザー溶接による溶接大径ステンレスパイプ・鋼管

溶接大径ステンレスパイプの熱処理
SUS304TPYなどの配管用溶接大径ステンレスパイプ・鋼管は、原則として製造のままです。
特に注文者の要求によって溶接大径ステンレスパイプに熱処理を行う場合には、各種のステンレス鋼種により上記に列記したような固溶化熱処理を行い、酸洗又はこれに準じる処理を行います。
ただし、上記に列記した以外の熱処理については、受渡当事者間の協定によることなっています。
なお、溶接大径ステンレスパイプに固溶化熱処理を行った場合の熱処理の記号は、”S”と表記します。
溶接大径ステンレスパイプのベベルエンド
パイプの両端は、注文者の指定があればベベルエンドに加工してもよいことになっていますが、特に指定のない限り、厚さ(パイプ肉厚)22mm以下のパイプのベベルエンドの形状は以下となります。
溶接大径ステンレスパイプ両端のベベルエンドの形状

■ 溶接大径ステンレスパイプの化学成分

SUS304TPYやSUS316TPYに代表される溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の化学成分は以下のような仕様となっています(JIS規格より)。

化学成分
溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の化学成分(溶鋼分析値)は、分析試験が行われ、以下の数値となります。
※以下、単位は%

SUS304
C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:8.00〜10.50/Cr:18.00〜20.00/Mo:−/その他:−
SUS304L
C:0.030以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:18.00〜20.00/Mo:−/その他:−
SUS309S
C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:12.00〜15.00/Cr:22.00〜24.00/Mo:−/その他:−
SUS310S
C:0.08以下/Si:1.50以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:19.00〜22.00/Cr:24.00〜26.00/Mo:−/その他:−
SUS315J1
C:0.08以下/Si:0.50〜2.50/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:8.50〜11.50/Cr:17.00〜20.50/Mo:0.50〜1.50/その他:Cu 0.50〜3.50
SUS315J2
C:0.08以下/Si:2.50〜4.00/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:11.00〜14.00/Cr:17.00〜20.50/Mo:0.50〜1.50/その他:Cu 0.50〜3.50
SUS316
C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:10.00〜14.00/Cr:16.00〜18.00/Mo:2.00〜3.00/その他:−
SUS316L
C:0.030以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:12.00〜15.00/Cr:16.00〜18.00/Mo:2.00〜3.00/その他:−
SUS317
C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:11.00〜15.00/Cr:18.00〜20.00/Mo:3.00〜4.00/その他:−
SUS317L
C:0.030以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:11.00〜15.00/Cr:18.00〜20.00/Mo:3.00〜4.00/その他:−
SUS321
C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:17.00〜19.00/Mo:−/その他:Ti 5×C %以上
SUS347
C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:17.00〜19.00/Mo:−/その他:Nb 10×C %以上
SUS329J1
C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:1.50以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:3.00〜6.00/Cr:23.00〜28.00/Mo:1.00〜3.00/その他:−
SUS329J3L
C:0.030以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:4.50〜6.00/Cr:21.00〜24.00/Mo:2.50〜3.50/その他:N 0.08〜0.20
SUS329J4L
C:0.030以下/Si:1.00以下/Mn:1.50以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:5.50〜7.50/Cr:24.00〜26.00/Mo:2.50〜3.50/その他:N 0.08〜0.30
備考1.
上記の各種ステンレス鋼種における化学成分値は、JIS G 4304(熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)及び、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)に規定される成分値が用いられています。
備考2.
SUS329J1、SUS329J3L 及び SUS329J4L については、必要に応じて上記の化学成分表以外の合金元素を添加してもよいとされています。

■ 溶接大径ステンレスパイプの機械的性質

SUS304TPYに代表される溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の機械的性質は以下のような数値となっています(JIS規格より)。

機械的性質(引張強さ/耐力)
SUS304TPYやSUS316TPYなどの溶接大径ステンレスパイプ・鋼管は、特に注文者の指定又は熱処理を行う場合には、引張強さ、耐力、及び伸びに関して引張試験が行われ、それぞれ以下の数値となります(伸びの数値は割愛)。
※以下、引張強さ及び耐力の単位は、N/mm2

SUS304TPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS304LTPY
引張強さ:480以上/耐力:175以上
SUS309STPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS310STPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS315J1TPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS315J2TPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS316TPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS316LTPY
引張強さ:480以上/耐力:175以上
SUS317TPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS317LTPY
引張強さ:480以上/耐力:175以上
SUS321TPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS347TPY
引張強さ:520以上/耐力:205以上
SUS329J1TPY
引張強さ:590以上/耐力:390以上
SUS329J3LTPY
引張強さ:620以上/耐力:450以上
SUS329J4LTPY
引張強さ:620以上/耐力:450以上

溶接大径ステンレスパイプは、溶接部引張試験が行われ、溶接部の引張強さについても上記の表の通りとなります。

そのほか、上記の溶接大径ステンレスパイプについて、JIS規格には以下の項目の規定があります。

  • 水圧試験特性又は非破壊検査特性
  • 外観
  • 試験
  • 検査及び再検査

■ SUS304TPY等の溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の配管サイズ・径・厚さ・重量

SUS304TPYやSUS316TPYなどに代表される各種溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の配管外径サイズ寸法・径、呼び厚さ(肉厚)ごとの、単位重量(質量)は以下の 表1a 及び 表1b になります。

表1a スケジュール5S及び10S(Sch5S 及び Sch10S)溶接大径ステンレスパイプ

表1a 溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の配管サイズ・径・厚さ・重量(Sch5S/Sch10S)
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表1a 溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の配管サイズ・径・厚さ・重量(Sch5S/Sch10S)

表1b スケジュール20S及び40(Sch20S 及び Sch40)溶接大径ステンレスパイプ

表1b 溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の配管サイズ・径・厚さ・重量(Sch20S/Sch40)
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表1b 溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の配管サイズ・径・厚さ・重量(Sch20S/Sch40)

配管外径・肉厚・重量

特に、上記のサイズ表以外の寸法を必要とする場合は、受渡当事者間の協定によることになります。

上記表1におけるSUS304TPYやSUS316TPYなどの溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の単位重量(質量)の数値は、各種溶接大径ステンレスパイプ鋼種の比重(基本質量ともいい、厚さ1mm、面積1m2の質量と同じ)が考慮され、以下の式によって計算されます。

W=At(D−t)

ここに、
W:管の単位質量(kg/m)
t:管の厚さ(mm)
D:管の外径(mm)
A:Wを求めるための単位の変換係数で、ステンレス鋼種別に以下の値

鋼種別溶接大径ステンレスパイプ(ステンレス)の比重(基本質量)と上記Aの値は以下の通りです。

SUS304TPY/SUS304LTPY/SUS321TPY
比重(基本質量):7.93、A=0.02491
SUS309STPY/SUS310STPY/SUS315J1TPY/SUS315J2TPY/SUS316TPY/SUS316LTPY/SUS317TPY/SUS317LTPY/SUS347TPY
比重(基本質量):7.98、A=0.02507
SUS329J1TPY/SUS329J3LTPY/SUS32934LTPY
比重(基本質量):7.80、A=0.02450

■ SUS304TPY等の溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の寸法許容差

SUS304TPYやSUS316TPYなどの配管用溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の配管外径サイズ 及び 厚さ(肉厚)の寸法許容差は、呼び径の区分により、それぞれ以下となります。

なお、溶接大径ステンレスパイプの長さに指定がある場合には、その寸法許容差は、その指定の長さ以上となります。

溶接大径ステンレスパイプ・鋼管の外径及び厚さの寸法許容差

■外径の許容差(%):
・呼び径 300A(12B)以下:±1
・呼び径 350A(14B)以上:±0.5 測定は周長による。

■厚さの許容差(%):
・呼び径 500A(20B)以下で 厚さ 8mm未満:(+15、−12.5)
・呼び径 500A(20B)以下で 厚さ 8mm以上:(+15、−10)
・呼び径 550A(22B)以上で 厚さ 8mm未満:(+規定しない、−12.5)
・呼び径 550A(22B)以上で 厚さ 8mm以上:(+規定しない、−10)

備考:
外径の測定に周長を用いる場合の判定は、周長実測値またはその換算外径のいずれによってもよいことになっています。
ただし、外径(D)と周長(l)の相互換算は、次の式によって計算します。

  • l=π×D

ここで、π=3.1416 となります。

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