SUS304TBS等 ステンレス鋼サニタリー配管の規格,鋼管サイズ,成分,記号,種類等
ここでは主に酪農や食品工業などの分野で使用するステンレスパイプとして用いられ、SUS304TBSやSUS316TBSに代表されるステンレスサニタリー配管のパイプサイズ寸法・径、ステンレス鋼種記号、寸法許容差、肉厚(厚さ)、化学成分・特性・性能などの資料をまとめています。
JISでは外径の標準寸法サイズは、25.4mm〜165.2mmの範囲まで、サニタリ配管肉厚(厚さ)は 1.2mm〜3.0mm の範囲のサニタリー管が規定されています。
また、サニタリー配管のうち、食品工業向けの継目無鋼管(シームレス鋼管)或いは溶接ステンレスパイプとして使われる、食品工業用ステンレス鋼管については、外径の標準寸法サイズは、12mm〜406.4mmの範囲まで、パイプ厚さは 1mm〜3.2mm までの食品工業用ステンレスパイプが規定されています。
ちなみに、サニタリーとは、「衛生的な、清潔な」という意味のことばであり、住宅用語分野ではキッチンを除いた浴室や洗面室、トイレなどの水まわりの設備をもつ部屋のこと指します。
■ ステンレス鋼サニタリー配管の規格、材料・材質種類、記号等
SUS304TBSやSUS316TBSなどのステンレス鋼サニタリー配管・パイプは、配管用ステンレスパイプとは少々用途が異なり、各種食品製造用プラント及び装置、乳製品製造設備、清涼飲料水製造設備、調理食品製造設備、醸造用設備などの食品工業分野をはじめ、医薬、化学工業品、化学薬品、化粧品、半導体設備などの用途・分野で用いられるステンレス鋼管・パイプです。
配管サイズ・寸法の呼び方は、配管用鋼管で用いられる呼び径やスケジュール番号(Sch番号)は使われず、外径サイズ・厚さとも、ミリ寸法で表されます。
例:25.4×1.2 (外径mm×厚さmm)
また、ステンレス鋼サニタリー管の長さの定尺は、一般に4M(4メートル)若しくは6M(6メートル)のパイプが一般的です。
ステンレスサニタリー配管は、JIS規格においては、以下のJISで規定されている配管になります。
- JIS G 3447 ステンレス鋼サニタリー管
JIS G 3447(ステンレス鋼サニタリー管)の国際対応規格は以下になります。
- ISO 2037:1992 Stainless steel tubes for the food industry - 食品産業用ステンレス鋼管
JIS規格に規定されるステンレスサニタリー配管の種類には、4種類のサニタリー管があり、それぞれの材質・材料記号(サニタリー配管のステンレス鋼種)は以下の通りです。
- SUS304TBS
- SUS304LTBS
- SUS316TBS
- SUS316LTBS
上記のSUS304TBSやSUS316TBSなどのステンレスサニタリー配管・パイプ製品の表示には、それぞれ以下の記号表示される場合があります。
- 耐圧性能及び浸出性能を表す記号:M
- 特別品質規定の指定を表す記号:Z
■ ステンレス鋼サニタリー配管の製造方法、熱処理など
JIS規格におけるSUS304TBSやSUS316TBSなどのステンレスサニタリー管・パイプの製造方法は以下のような仕様となっています。
- ステンレス鋼サニタリー配管の製造方法
- SUS304TBSやSUS316TBSなどのステンレスサニタリー配管は、継目無く製造する継目無鋼管(シームレスパイプ)とするか自動アーク溶接、レーザー溶接、又は電気抵抗溶接による電気抵抗溶接鋼管(電縫鋼管) として製造します。
- ステンレス鋼サニタリー配管の熱処理
- SUS304TBSなどのステンレスサニタリー配管・鋼管は、固溶化熱処理(1010℃以上、急冷)を行います。
■ ステンレス鋼サニタリー配管の化学成分
SUS304TBSやSUS316TBSに代表されるステンレスのサニタリー配管・パイプの化学成分は以下のような仕様となっています(JIS規格より)。
化学成分
ステンレスサニタリー配管・鋼管の化学成分(溶鋼分析値)は、分析試験が行われ、以下の数値となります。
※以下、単位は%
- SUS304TBS
- C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:8.00〜10.50/Cr:18.00〜20.00/Mo:−/その他:−
- SUS304LTBS
- C:0.030以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:18.00〜20.00/Mo:−/その他:−
- SUS316TBS
- C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:10.00〜14.00/Cr:16.00〜18.00/Mo:2.00〜3.00/その他:−
- SUS316LTBS
- C:0.030以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.045以下/S:0.030以下/Ni:12.00〜15.00/Cr:16.00〜18.00/Mo:2.00〜3.00/その他:−
- 備考:
- 注文者がステンレス鋼サニタリー配管の製品分析(※1)を要求する場合には、上記の化学成分値に対する許容変動値は、JIS G 4304(熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)及び、JIS G 0321(鋼材の製品分析方法及びその許容変動値)の表5が適用されます。
- (※1)
- 製品分析とは、圧延又は鍛造された製品から採取した分析用試料について行う化学成分の分析のことです。
これに対し、溶鋼分析とは、溶鋼がとりべから鋳型に注入され、凝固するまでの過程で採取した分析用試料について行う化学成分の分析のことです。
■ ステンレス鋼サニタリー配管の機械的性質
SUS304TBSに代表されるステンレス鋼サニタリー配管・鋼管の機械的性質(引張強さ及び伸び)は以下のような数値となっています(JIS規格より)。
機械的性質(引張強さ/伸び)
SUS304TBSやSUS316TBSなどのステンレスサニタリー配管・パイプは、引張強さ及び伸びに関して引張試験(ただし、引張試験は特に注文者の指定がない限り省略してもよい)が行われ、それぞれ以下の数値となります。
※以下、引張強さの単位は N/mm2、伸びの単位は %
- SUS304TBS
- 引張強さ:520以上/伸び:35以上
- SUS304LTBS
- 引張強さ:480以上/伸び:35以上
- SUS316TBS
- 引張強さ:520以上/伸び:35以上
- SUS316LTBS
- 引張強さ:480以上/伸び:35以上
- 備考:
- ステンレス鋼サニタリー配管のうち、溶接鋼管から引張試験片を採取する場合、12号試験片は、継目を含まない部分から採取します。
機械的性質(展開性)
SUS304TBSやSUS316TBSなどのステンレス鋼サニタリー配管の溶接鋼管は、展開試験を行い、溶接部にきず、割れなどを生じてはいけません。
■ ステンレス鋼サニタリー配管の表面仕上げ
SUS304TBSなどのステンレス鋼サニタリー管は、通常、内外面とも、JIS R 6001(研削といし用研磨材の粒度)による400番研磨まで研磨して仕上げます。
ただし、注文者は、サニタリー配管の仕上げ面及び仕上げ状態を指定してもよいことになっています。
そのほか、上記のステンレスのサニタリー配管について、JIS規格には以下の項目の規定があります。
- 水圧試験特性若しくは空気圧試験特性又は非破壊検査特性
- 耐圧性能
- 浸出性能(※)
- 外観
- 試験
- 検査
- (※)
- 水道法では、給水装置として使用するステンレス鋼サニタリー管に、浸出性能試験を規定しています。
■ SUS304TBS等 ステンレス鋼サニタリー配管の鋼管サイズ・径・厚さ、寸法許容差
SUS304TBSやSUS316TBSなどに代表される各種ステンレスサニタリー配管・パイプの配管外径サイズ寸法・径、厚さ(肉厚)、定尺長さ、及び寸法許容差は以下の通りです。
- 外径サイズ寸法・厚さ・長さ
- ステンレス鋼サニタリー管の配管外径サイズ寸法・厚さ・長さは、以下の表1になります。
表1. SUS304TBS等 ステンレス鋼サニタリー配管の外径サイズ・径・厚さ・長さ
外径(mm ) | 厚さ(mm ) | 長さ(m ) |
---|---|---|
25.4 | 1.2 | 4又は6 |
31.8 | 1.2 | 4又は6 |
38.1 | 1.2 | 4又は6 |
50.8 | 1.5 | 4又は6 |
63.5 | 2.0 | 4又は6 |
76.3 | 2.0 | 4又は6 |
89.1 | 2.0 | 4又は6 |
101.6 | 2.0 | 4又は6 |
114.3 | 3.0 | 4又は6 |
139.8 | 3.0 | 4又は6 |
165.2 | 3.0 | 4又は6 |
- 寸法許容差(外径及び厚さ)
- ステンレス鋼サニタリー管の外径及び厚さの寸法許容差は、以下の表2になります。
表2. SUS304TBS等 ステンレス鋼サニタリー配管の外径及び厚さの寸法許容差
外径(mm ) | 外径の許容差(mm ) | 厚さの許容差(%) |
---|---|---|
25.4 | ±0.15 | ±10 |
31.8 | ±0.16 | ±10 |
38.1 | ±0.19 | ±10 |
50.8 | ±0.25 | ±10 |
63.5 | ±0.25 | ±10 |
76.3 | ±0.25 | ±10 |
89.1 | +0.30、−0.40 | ±10 |
101.6 | +0.35、−0.40 | ±10 |
114.3 | +0.40、−0.60 | ±10 |
139.8 | +0.40、−0.80 | ±10 |
165.2 | +0.40、−1.20 | ±10 |
- 備考:
- ステンレスサニタリー配管の外径の測定方法は、周長によります。
この場合、周長を円周率3.1416で除して求めます。
ただし、管軸に直角な平面での外径の測定値と外径との差は、±1%とします。
- 寸法許容差(長さ)
- ステンレス鋼サニタリー管の長さの寸法許容差は、(+10mm、−0mm)になります。
■ 食品工業用ステンレスパイプ
食品工業用ステンレス鋼管は、ステンレス鋼サニタリー配管に類する鋼管として、JIS G 3447(ステンレス鋼サニタリー管)の附属書に規定されています。
この附属書は、『ISO 2037:1992 Stainless steel tubes for the food industry(食品産業用ステンレス鋼管)』を翻訳して技術的内容などを変更することなく作成されている規定であり、食品工業向けの継目無し又は溶接ステンレス鋼管の寸法とその許容差及び表面粗さ、材料及び衛生上の要求事項が規定されています。
規格の概要などは以下の通りです。
食品工業用ステンレスパイプの寸法
食品工業用ステンレス鋼管の寸法は、以下の付表1の通りです。
付表1. 食品工業用ステンレスパイプの外径サイズ・厚さ
外径(mm ) | 厚さ(mm ) |
---|---|
12 | 1 |
12.7 | 1 |
17.2 | 1 |
21.3 | 1 |
25 | 1.2 ; 1.6 |
33.7 | 1.2 ; 1.6 |
38 | 1.2 ; 1.6 |
40 | 1.2 ; 1.6 |
51 | 1.2 ; 1.6 |
63.5 | 1.6 |
70 | 1.6 |
76.1 | 1.6 |
88.9 | 2 |
101.6 | 2 |
114.3 | 2 |
139.7 | 2 |
168.3 | 2.6 |
219.1 | 2.6 |
273 | 2.6 |
323.9 | 2.6 |
355.6 | 2.6 |
406.4 | 3.2 |
寸法許容差(外径及び厚さ)
食品工業用ステンレス鋼管の寸法許容差は、以下の通りです。
- 外径の許容差
- 外径101.6mm以下のものについては、ISO 5252:1991 のクラスD4 による。
外径101.6mmを超えるものについては、ISO 5252:1991 のクラスD3 による。
- 厚さの許容差
- 厚さの許容差は、ISO 5252:1991 のクラスT3 による。
表面粗さ
食品工業用ステンレスパイプの表面粗さは、ISO 468 の表し方で、以下の通りです。
- a)精密仕上げ表面
- Ra≦1.0μm
- b)その他の表面
- Ra≦2.5μm
溶接線上の表面粗さは、Ry=16μm を超えてはならない。
材料
食品工業用ステンレスパイプの材料は、オーステナイト系ステンレス鋼を使用する。
- 備考:
- 圧力用の食品工業用ステンレスパイプには、一般的に以下のタイプのステンレス鋼種が適している。
■継目無鋼管:ISO 2604-2:1975 のTS47、TS60 及び TS61
■溶接鋼管:ISO 2604-5:1978 のTW47、TW60 及び TW61
- 参考1.:
- ISO 2604-2:1975 のTS47、TS60、TS61 及び ISO 2604-5:1978 のTW47、TW60、TW61 の要求事項の一部を参考表1〜3 に示す。
- 参考2.:
- ISO 2604-2 のステンレス鋼管の部分及び ISO 2604-5 は、それぞれ以下の規格に改正された。
■ISO 9329-4:1997 Seamless steel tubes for pressure purposes -- Technical delivery conditions -- Part 4: Austenitic stainless steels(圧力用継目無管−技術的出荷条件−第4部:オーステナイト系ステインレス鋼)
■ISO 9330-6:1997 Welded steel tubes for pressure purposes -- Technical delivery conditions -- Part 6: Longitudinally welded austenitic stainless steel tubes(圧力用溶接鋼管−技術的出荷条件−第6部:縦溶接オーステナイト系ステインレス鋼管)
- 参考表1.化学成分
- ■ TS47
C≦0.07/Si≦1.00/Mn≦2.00/P≦0.045/S≦0.030/Cr:17.00〜19.00/Mo:−/Ni:8.00〜12.00
■ TS60
C≦0.07/Si≦1.00/Mn≦2.00/P≦0.045/S≦0.030/Cr:16.00〜18.50/Mo:2.00〜2.50/Ni:11.00〜14.00
■ TS61
C≦0.07/Si≦1.00/Mn≦2.00/P≦0.045/S≦0.030/Cr:16.00〜18.50/Mo:2.5〜3.00/Ni:11.00〜14.50
■ TW47
C≦0.07/Si≦1.00/Mn≦2.00/P≦0.045/S≦0.030/Cr:17.00〜19.00/Mo:−/Ni:8.00〜11.00
■ TW60
C≦0.07/Si≦1.00/Mn≦2.00/P≦0.045/S≦0.030/Cr:16.00〜18.50/Mo:2.00〜2.50/Ni:10.50〜14.00
■ TW61
C≦0.07/Si≦1.00/Mn≦2.00/P≦0.045/S≦0.030/Cr:16.00〜18.50/Mo:2.5〜3.00/Ni:11.00〜14.50
- 参考表2.機械的性質(室温)
- (下降伏点又は0.2%耐力、1.0%耐力及び引張強さの単位はN/mm2、伸びの単位は%)
■ TS47
下降伏点又は0.2%耐力:195以上/1.0%耐力:235以上/引張強さ:490〜690/伸び:30以上
■ TS60
下降伏点又は0.2%耐力:205以上/1.0%耐力:245以上/引張強さ:510〜710/伸び:30以上
■ TS61
下降伏点又は0.2%耐力:205以上/1.0%耐力:245以上/引張強さ:510〜710/伸び:30以上
■ TW47
下降伏点又は0.2%耐力:195以上/1.0%耐力:235以上/引張強さ:510〜710/伸び:30以上
■ TW60
下降伏点又は0.2%耐力:205以上/1.0%耐力:245以上/引張強さ:510〜710/伸び:30以上
■ TW61
下降伏点又は0.2%耐力:205以上/1.0%耐力:245以上/引張強さ:490〜690/伸び:30以上
衛生上の要求事項
■製造過程で鋼管に接触する非鉄金属又はその合金が滞留して、後工程や使用中において有害なものとならないように注意しなければならない。
■鋼管の内面は、清浄、かつ、滑らかで、表面欠陥、介在物、筋があってはならない。