加熱炉用鋼管・チューブ(STF,STFA,SUS-TF,NCF-TF)の配管サイズ、重量等
ここでは主に石油精製工業や石油化学工業などの加熱炉においてプロセス流体を加熱するために用いる加熱炉用鋼管・チューブとして規定されている、炭素鋼鋼管(STF410)、合金鋼鋼管(STFA)、オーステナイト系ステンレス鋼鋼管(SUS-TF)及びニッケルクロム鉄合金管(NCF-TF)の配管サイズ寸法・径、重量、寸法許容差、肉厚(厚さ)、特性、規格などの資料をまとめています。
JISでは外径の標準寸法サイズは、50A〜250A(2B〜10B)、つまり外径60.5mm〜267.4mmの範囲まで、配管肉厚は厚さが 4.0mm〜28.0mm までの加熱炉用鋼管・チューブが規定されています。
■ 加熱炉用鋼管・チューブの規格、種類や表示記号等
加熱炉用鋼管・チューブは、加熱炉において主にプロセス流体の加熱ために用いるチューブ・鋼管であり、低温熱交換器用鋼管などと同様、特殊用途の鋼管です。
加熱炉用鋼管の配管サイズ・寸法の呼び方は、配管用鋼管と同様に呼び径により外径を表しますが、チューブ厚さ(肉厚)は、スケジュール番号(Sch番号)体系は使われず、ミリ寸法で表されます。
例:100A×7.0 又は 4B×7.0(外径mm×厚さmm)
JIS規格においては、以下のJISで規定されている配管になります。
- JIS G 3467 加熱炉用鋼管
加熱炉用鋼管・チューブの種類には、以下の記号で表される19種類があります。
- STF410:炭素鋼鋼管
- STFA12:合金鋼鋼管(モリブデン鋼鋼管)
- STFA22:合金鋼鋼管(クロムモリブデン鋼鋼管)
- STFA23:合金鋼鋼管(クロムモリブデン鋼鋼管)
- STFA24:合金鋼鋼管(クロムモリブデン鋼鋼管)
- STFA25:合金鋼鋼管(クロムモリブデン鋼鋼管)
- STFA26:合金鋼鋼管(クロムモリブデン鋼鋼管)
- SUS304TF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS304HTF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS309TF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS310TF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS316TF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS316HTF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS321TF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS321HTF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS347TF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- SUS347HTF:オーステナイト系ステンレス鋼鋼管
- NCF800TF:ニッケルクロム鉄合金管
- NCF800HTF:ニッケルクロム鉄合金管
上記の STF410・STFA22・SUS304TF等の加熱炉用鋼管・チューブの製造方法・仕上方法を表す記号にはそれぞれ以下が用いられます。
- 製造方法を表す記号
- ・継目無し:S
- 仕上方法を表す記号
- ・熱間仕上げ:H
・冷間仕上げ:C
STF410・STFA22・SUS304TF等 パイプの製品表示は、上記の記号を組み合わせて使い、以下のように表示されます。
- 熱間仕上継目無鋼管(熱間仕上シームレスパイプ) -S-H
- 冷間仕上継目無鋼管(冷間仕上シームレスパイプ) -S-C
例1:冷間仕上継目無鋼管 STFA22 の場合 : STFA22-S-C
例2:熱間仕上継目無鋼管 STFA25 の場合 : STFA25-S-H
■ 加熱炉用鋼管・チューブの製造方法
STF410・STFA22・SUS304TF等の鋼管・チューブの製造方法は以下のような仕様となっています(JIS規格より)。
加熱炉用鋼管・チューブの製造方法
加熱炉用鋼管・チューブの製造方法は、熱間仕上継目無鋼管(シームレスパイプ)又は冷間仕上継目無鋼管(シームレスパイプ)のいずれかとして製造します。
■ 加熱炉用鋼管・チューブの熱処理
炭素鋼鋼管(STF410)、合金鋼鋼管(STFA)、オーステナイト系ステンレス鋼鋼管(SUS-TF)及びニッケルクロム鉄合金管(NCF-TF)は、それぞれの鋼種により以下のような熱処理を施します。
炭素鋼鋼管(STF410)の熱処理
合金鋼鋼管(STFA:モリブデン鋼鋼管及びクロムモリブデン鋼鋼管)の熱処理
- STFA12(モリブデン鋼鋼管)
- 低温焼なまし、等温焼なまし、完全焼なまし、焼ならし又は焼ならし後焼戻し
- STFA22(クロムモリブデン鋼鋼管)
- 低温焼なまし、等温焼なまし、完全焼なまし又は焼ならし後焼戻し
- STFA23、STFA24、STFA25 及び STFA26(クロムモリブデン鋼鋼管)
- 等温焼なまし、完全焼なまし又は焼ならし後焼戻し(※1)
(※1)
STFA23、STFA24、STFA25 及び STFA26 の焼戻温度は、650℃以上とする。
オーステナイト系ステンレス鋼鋼管(SUS-TF)の熱処理
- SUS304TF
- 1010℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS304HTF
- 1040℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS309TF
- 1030℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS310TF
- 1030℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS316TF
- 1010℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS316HTF
- 1040℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS321TF (※1)
- 920℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS321HTF
- 冷間仕上、1095℃以上、固溶化熱処理、急冷/熱間仕上、1050℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS347TF (※1)
- 980℃以上、固溶化熱処理、急冷
- SUS347HTF
- 冷間仕上、1095℃以上、固溶化熱処理、急冷/熱間仕上、1050℃以上、固溶化熱処理、急冷
- (※1)
- SUS321TF 及び SUS347HTF については、安定化熱処理を指定してもよく、この場合の熱処理温度は、850〜930℃とされています。
ニッケルクロム鉄合金管(NCF-TF)の熱処理
- NCF800TF
- 950℃以上、焼なまし、急冷
- NCF800HTF
- 1100℃以上、固溶化熱処理、急冷
■ 加熱炉用鋼管の化学成分
加熱炉用鋼管・チューブの化学成分は以下のような仕様となっています(JIS規格より)。
化学成分
STF410・STFA22・SUS304TF等 パイプの化学成分(溶鋼分析値)は、分析試験が行われ、以下の数値となります。
※以下、単位は%
- STF410
- C:0.30以下/Si:0.10〜0.35/Mn:0.30〜1.00/P:0.035以下/S:0.035以下/Ni:−/Cr:−/Mo:−/その他:−
- STFA12
- C:0.10〜0.20/Si:0.10〜0.50/Mn:0.30〜0.80/P:0.035以下/S:0.035以下/Ni:−/Cr:−/Mo:0.45〜0.65/その他:−
- STFA22
- C:0.15以下/Si:0.50以下/Mn:0.30〜0.60/P:0.035以下/S:0.035以下/Ni:−/Cr:0.80〜1.25/Mo:0.45〜0.65/その他:−
- STFA23
- C:0.15以下/Si:0.50〜1.00/Mn:0.30〜0.60/P:0.030以下/S:0.030以下/Ni:−/Cr:1.00〜1.50/Mo:0.45〜0.65/その他:−
- STFA24
- C:0.15以下/Si:0.50以下/Mn:0.30〜0.60/P:0.030以下/S:0.030以下/Ni:−/Cr:1.90〜2.60/Mo:0.87〜1.13/その他:−
- STFA25
- C:0.15以下/Si:0.50以下/Mn:0.30〜0.60/P:0.030以下/S:0.030以下/Ni:−/Cr:4.00〜6.00/Mo:0.45〜0.65/その他:−
- STFA26
- C:0.15以下/Si:0.25〜1.00/Mn:0.30〜0.60/P:0.030以下/S:0.030以下/Ni:−/Cr:8.00〜10.00/Mo:0.90〜1.10/その他:−
- SUS304TF
- C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:8.00〜11.00/Cr:18.00〜20.00/Mo:−/その他:−
- SUS304HTF
- C:0.04〜0.10/Si:0.75以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:8.00〜11.00/Cr:18.00〜20.00/Mo:−/その他:−
- SUS309TF
- C:0.15以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:12.00〜15.00/Cr:22.00〜24.00/Mo:−/その他:−
- SUS310TF
- C:0.15以下/Si:1.50以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:19.00〜22.00/Cr:24.00〜26.00/Mo:−/その他:−
- SUS316TF
- C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:10.00〜14.00/Cr:16.00〜18.00/Mo:2.00〜3.00/その他:−
- SUS316HTF
- C:0.04〜0.10/Si:0.75以下/Mn:2.00以下/P:0.030以下/S:0.030以下/Ni:11.00〜14.00/Cr:16.00〜18.00/Mo:2.00〜3.00/その他:−
- SUS321TF (※1)
- C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:17.00〜19.00/Mo:−/その他:Ti 5×C%以上
- SUS321HTF
- C:0.04〜0.10/Si:0.75以下/Mn:2.00以下/P:0.030以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:17.00〜20.00/Mo:−/その他:Ti 4×C%〜0.60
- SUS347TF (※1)
- C:0.08以下/Si:1.00以下/Mn:2.00以下/P:0.040以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:17.00〜19.00/Mo:−/その他:Nb 10×C%以上
- SUS347HTF
- C:0.04〜0.10/Si:0.75以下/Mn:2.00以下/P:0.030以下/S:0.030以下/Ni:9.00〜13.00/Cr:17.00〜20.00/Mo:−/その他:Nb 8×C%〜1.00
- NCF800TF
- C:0.10以下/Si:1.00以下/Mn:1.50以下/P:0.030以下/S:0.015以下/Ni:30.00〜35.00/Cr:19.00〜23.00/Mo:−/その他:Cu 0.75以下、Al 0.15〜0.60、Ti 0.15〜0.60
- NCF800HTF
- C:0.05〜0.10/Si:1.00以下/Mn:1.50以下/P:0.030以下/S:0.015以下/Ni:30.00〜35.00/Cr:19.00〜23.00/Mo:−/その他:Cu 0.75以下、Al 0.15〜0.60、Ti 0.15〜0.60
- 備考1.
- 上記のそれぞれの種類において、上限値、下限値、又は上下限値のない合金元素を必要に応じて添加する場合、当該種類が他の種類の規定値を満たして種類の区別ができなくなるほど添加してはいけません。
- 備考2.
- 注文者が加熱炉用鋼管・チューブの製品分析(※1)を要求する場合は、上記の化学成分値に対する製品分析の許容変動値は、分析試験によって試験を行い、炭素鋼鋼管(STF410)は、JIS G 0321(鋼材の製品分析方法及びその許容変動値)の表3を適用し、ニッケルクロム鉄合金管(NCF-TF)は、受渡当事者間の協定によります。
また、オーステナイト系ステンレス鋼鋼管(SUS-TF)製品分析値は、JIS G 0321 の表4が適用されます。
- (※1)
- 製品分析とは、圧延又は鍛造された製品から採取した分析用試料について行う化学成分の分析のことです。
これに対し、溶鋼分析とは、溶鋼がとりべから鋳型に注入され、凝固するまでの過程で採取した分析用試料について行う化学成分の分析のことです。
■ 加熱炉用鋼管の機械的性質
加熱炉用鋼管・チューブの機械的性質は以下のような規定となっています(JIS規格より)。
機械的性質(引張強さ/降伏点又は耐力/伸び)
STF410・STFA22・SUS304TF等の鋼管・チューブは、引張強さ、降伏点又は耐力及び伸びに関して引張試験が行われ、それぞれ以下の数値となります(伸びの数値は割愛)。
※以下、単位は N/mm2(なお、1N/mm2=1MPa)
- STF410
- 引張強さ:410以上/降伏点又は耐力:245以上
- STFA12
- 引張強さ:380以上/降伏点又は耐力:205以上
- STFA22
- 引張強さ:410以上/降伏点又は耐力:205以上
- STFA23
- 引張強さ:410以上/降伏点又は耐力:205以上
- STFA24
- 引張強さ:410以上/降伏点又は耐力:205以上
- STFA25
- 引張強さ:410以上/降伏点又は耐力:205以上
- STFA26
- 引張強さ:410以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS304TF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS304HTF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS309TF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS310TF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS316TF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS316HTF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS321TF (※1)
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS321HTF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS347TF (※1)
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- SUS347HTF
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- NCF800TF(冷間仕上げ)
- 引張強さ:520以上/降伏点又は耐力:205以上
- NCF800TF(熱間仕上げ)
- 引張強さ:450以上/降伏点又は耐力:175以上
- NCF800HTF
- 引張強さ:450以上/降伏点又は耐力:175以上
機械的性質(へん平性)
加熱炉用鋼管・チューブは、へん平試験を行い、試験片に、きず、割れを生じてはいけません。
その他、STF410・STFA22・SUS304TF等 鋼管・チューブについては、JIS規格には以下の項目の規定があります。
- オーステナイト結晶粒度
- 水圧試験特性又は非破壊検査特性
- 外観
- 試験
- 検査
■ 加熱炉用鋼管・チューブの配管サイズ・径・厚さ・重量
STF410・STFA22・SUS304TF等 加熱炉用鋼管・チューブの配管サイズ寸法・径、呼び厚さ(肉厚)ごとの、単位重量(質量)は、特に指定が無い限り、以下の 表1a〜表1c になります。
備考1.
上記 表1a〜表1c における各種鋼管・チューブの単位重量(質量)の数値は、それぞれの鋼管鋼種の比重(基本質量ともいい、厚さ1mm、面積1m2の質量と同じ)が考慮され、以下の式によって計算されます。
W=At(D−t)
ここに、
W:管の単位質量(kg/m)
t:管の厚さ(mm)
D:管の外径(mm)
A:Wを求めるための単位の変換係数で、加熱炉用鋼管・チューブ鋼種別に以下の値。
加熱炉用鋼管・チューブの鋼種別の比重(基本質量)と上記式におけるAの値は以下の通りです。
- 炭素鋼鋼管(STF410)/合金鋼鋼管(STFA12,STFA22,STFA23,STFA24,STFA25,STFA26)/ニッケルクロム鉄合金管(NCF800TF,NCF800HTF)
- 比重(基本質量):7.85、A=0.02466
- オーステナイト系ステンレス鋼鋼管(SUS304TF/SUS304HTF/SUS321TF/SUS321HTF)
- 比重(基本質量):7.93、A=0.02491
- オーステナイト系ステンレス鋼鋼管(SUS309TF/SUS310TF/SUS316TF/SUS316HTF/SUS347TF/SUS347HTF)
- 比重(基本質量):7.98、A=0.02507
備考2.
上記の 表1a〜表1c 以外の寸法は、受渡当事者間の協定によります。
備考3.
取引に用いる各種加熱炉用鋼管・チューブの単位質量は、熱間仕上継目無鋼管については 表1a〜表1c の数値の14%増、冷間仕上継目無鋼管については、 表1a〜表1c の数値の10%増をもって標準単位質量とされます。
■ 加熱炉用鋼管・チューブの寸法許容差
STF410・STFA22・SUS304TF等 鋼管・チューブの配管外径の許容差、パイプの厚さ及び偏肉の許容差及びパイプの長さの許容差は、それぞれ以下の通りとなります。
鋼管・チューブ外径寸法、厚さ及び偏肉の許容差
STF410・STFA22・SUS304TF等 鋼管・チューブの配管外径寸法、厚さ及び偏肉の許容差は、以下のとおりとなります。
- 熱間継目無鋼管・チューブの場合
- ■外径の寸法許容差:±0.8%
■厚さの寸法許容差:+28%、−0
■偏肉の寸法許容差:厚さの22.8%以下 - 冷間継目無鋼管・チューブの場合
- ■外径の寸法許容差:±0.5%
■厚さの寸法許容差:+22%、−0
■偏肉の寸法許容差:− - 備考:
- 偏肉とは、同一断面における測定厚さの最大と最小との差の注文厚さに対する割合をいい、偏肉の許容差は、厚さ5.6mm未満のパイプには適用されません。
鋼管・チューブの長さの許容差
STF410・STFA22・SUS304TF等 鋼管・チューブの長さの許容差は、以下の通りとなります。
- 長さ7m以下の加熱炉用鋼管・チューブ
- 長さの許容差:+10mm、−0mm
- 長さ7mを超えるの加熱炉用鋼管・チューブ
- 長さの許容差:
長さ3mごと及びその端数を増すごとに、上記のプラス側許容差に3mmを加える。ただし、最大値は15mmとする。 - 備考:
- 特に正確な長さを必要とする場合、その許容差は、受渡当事者間の協定によります。